王(King)、公(Dutch)、伯(Count)。請求権についても

CKシリーズは地図がプレイ画面となっていることからもわかるように、土地をめぐる争いが第一のテーマになっている。このゲームで特徴的なのは、土地に階層があり、それに応じた階級が人物に与えられることにある。

小さい方から言うと、Barony(男爵領)にはBaron(男爵)が対応し、County(伯爵領)にはCount(伯爵)が対応し、Duchy(公爵領)にはDuke(公爵)が対応し、Kingdom(王国領)にはKing(王)が対応し、Empire(帝国)にはEmperor(皇帝)が対応する。女性形は省略した。

では、Baronyから見ていこう。これは領土(territory)の最小単位である。


画像ではCarcassonneが選択されている。黄色の枠でハイライトされているのはカルカッソンヌ伯爵領全体だ。その中の一部がBarony of Carcassonneというわけだ。

同じ伯爵領のなかにNarbonneの町もある。ナルボンヌ。ここも歴史の古い町だ。

この伯爵領の首都はCarcassonne城となっている。カルカッソンヌ城。世界遺産である。古代ローマ時代からあったので、この時代にすでに存在する。


ここはぜひ一度訪れてみてほしい。ドラクエの世界がそこにある。Google Mapで歩くのでもいい。ちなみに現在は40人はこの城の中で暮らしている。マジで。

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まあそれはいいとして、この地域の3つの小さなBaronyをあわせたものがCounty of Carcassonneとなっている。ひとつのCountyの中に1つは城があり、そこがそのCountyの首都となっているわけだ。

当たり前のことだが、カルカッソンヌ伯爵の称号を保持するためにはカルカッソンヌ伯爵領を実際に統治している必要がある。つまり、実際にカルカッソンヌ伯爵領を統治しているのが現在のカルカッソンヌ伯爵なのである。また、ゲーム開始時時点で空白地というものはなく、どの土地も誰かの支配下になっている。こういうあたり前のことってなかなか説明されないのだが、ここをきちんと説明しないと残りの部分がどうもピンとこないと思う。なので、当たり前だけど大事なことだ。

伯爵の称号を持つためには1つ以上の伯爵領を実際に統治している必要があり、これは上位の称号でも同じだ。たとえば、公爵位を持つには、最低1つの公爵領を支配している必要がある。

伯爵位を持っていると、男爵を属国にすることができるが、同じ階級である伯爵位のものは属国にすることができない。しかし、ほかの伯爵領を直轄地にすることで統治を広げることはできる。なお、他国の伯爵を属国にするには公爵位を持っている必要がある。

ところで、伯爵領は最低でも1つだけはペナルティなく保持することができる。自分の能力値Stewardshipが高かったり、公爵などの高位の称号を持っていると、この上限が上がる。

ちなみに、ある伯爵位の請求権を持たずにその伯爵を属国にしている場合は、「正当な支配者ではない」というペナルティがつく。

「Not Rightful Liege -5」というやつ、これだ。そんなに大きなペナルティではない。

ちなみに、Countyの中の領地にTemple、つまりBishopric(司教座)があることがあり、そこにはBishop(司教)が住んでいる。ゲーム上ではこれは伯爵領のなかの1つの土地を占めるので、もし城がCountyのなかにある場合は、城とは別の土地を占めることになるのだが、その結果以下のようなことが起こる。


右に見えるコロッセオがあるのがローマ、その左にハイライトされている小さい丸がヴァチカン。そう、このゲームだとヴァチカンはローマの外にあることになっている。実際の旅行のときにゲームを信じてヴァチカンに行くためにローマの外に出ないようにしてくれ。

ちなみにこれは教皇領なので、アレクサンダー3世がローマ伯爵領の主君になっていて、ヴァチカンには別の司教が住んでいることになっている。これも変だが、まあ仕方ない。ゲーム作る人も「これなんとかならないかな」と思ったことだと思う。ちなみに、コンスタンティノープルでは城のなかにハギア・ソフィアがあることになっているが、司教はいない(ほんとはいるのだが、データ上は連携されていない)。


ごくまれに、城がなくてTempleだけがあるCountyがあることがある。たとえばReims、ランスだ。1066年時点では1210年に火災で消失した大聖堂がまだある。


ここには司教が住んでいて、戦争で攻めて直轄地にすることもできるが、自分で治めても収入ゼロになってしまう。適当な領地を持たない配下にこの地を与えると、途端に司教になるので笑える。なお、継承は教会によって勝手にされるので家臣の子供が選ばれるのではない。なお、自分の子供にこの土地を与えることはできない。ほかの伯爵領を持っている自分の家臣にこの地を与えるとそいつは司教になってくれないので、この領地で兵士は供出できるが税は徴収できなくなる。あと、はじめに城がないと書いたが、このCounty内にも実は城はあって、Baronが治めている。とにかく変則的なので、もともといる司教から土地を奪う際には注意がいる。Mainzもこのタイプ。

ほかに珍しい土地として、Pisaは城ではなく都市が首都となっている。ここはゲーム開始時にPisaだけでDuchyとKingdomがあるなど変なところだ。で、ここも自分の直轄だと機能しないが、家臣はもちろん子供にあげても機能する。継承は共和制の法によって決められるが、普通に男の子供が選ばれる。

ところで、他人の伯爵領を奪うには主に2つ方法がある。まず戦争で奪う方法がある。ある伯爵領の請求権を捏造して戦争に勝って奪うと、その称号の所有者は勝った側に移行する。伯爵領が自分の属国である場合は、戦争をせずに称号を奪い取ることができることもある。ペナルティなく奪うにはいろいろ条件があるので自分で確認してほしい。
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では次の話。Duchyについて。Duchy(公爵領)はいくつかの伯爵領をあわせたものになっている。

Duchy of Languedoc。ラングドック公爵領。左にある小さい紋章が並んだリストがこの公爵領を構成する伯爵領。なかにカルカッソンヌがある。

ちなみに、ラングドック公爵の称号を持つからといって、それがただちに下位のカルカッソンヌ伯爵領を持つことを意味しない。ある公爵位を名乗るためにはその公爵領のどこかの伯爵領を直接統治する必要もない。その公爵地にあるすべての伯爵領は属領でもかまわない。

実際、1066年スタートのトゥルーズ公爵は、Languedocのなかのひとつの伯爵領も直接統治していないにも関わらず、Duchy of Languedocを作ることができる。

これもこのゲームの特徴的なところだと思う。いわば宙に浮いた状態の公爵の称号を自分で手に入れることができるわけだ。ほかのゲームだと属国とかがゲームシステム的に中途半端な位置づけのことが多いが、このゲームだと土地をもつ臣下は全部属国という形で、基本のシステムを構成する要素となっているのだ。このゲームは封建制をシミュレートすることに重点を置いているわけだ。

では次の話、Kingdomについて。Kingdom(王領)はいくつかの公爵領をあわせたものになっている。

DutchyをいくつかあわせたものがKingdom(王国)。Kingdom of Aquitaine。アキテーヌ王国というわけだ。ちなみに、アキテーヌはたしかに王国と呼ばれた時代もあったので、歴史的に間違いというわけではない。

ちなみに、アキテーヌ王の称号を持つからといって、それがただちに下位のたとえばラングドック公爵領を持つことを意味しない。じつは、王を名乗るためにはその公爵領のどこかの伯爵領を直接統治する必要もない。すべて属領でもかまわない。さらに言えば、王を名乗るためにそこに属する下位の公爵の称号を持っている必要もない。あくまで支配下の伯爵領のみが必要なのである。

ところで、他人の公爵領を奪うには主に2つ方法がある。まず戦争で奪う方法がある。ある公爵領の請求権を捏造して戦争に勝って奪うと、その称号の所有者は勝った側に移行する。しかし、その下の伯爵領までも直轄地にできるわけではない。戦った相手の公爵の元直轄地だけは自分の直轄地になるが、ほかの伯爵領は属国の支配権が移動するだけだ。公爵領が自分の属国である場合は、戦争をせずに称号を奪い取ることができることもある。ペナルティなく奪うにはいろいろ条件があるので自分で確認してほしい。

なお、自分が王位を持っていて、さらにある公爵位を持っていて、そこの公爵位の直下の属国である伯爵が自分へのOpinionにマイナスペナルティを持っていることがある。ないこともあるが理由はわからない。


ウィリアム伯爵が「Liege Holds De Jure Duchy」として-25のOpinionマイナスペナルティを持っている。イングランド征服王である自分がノルマンディー公爵位をも持っているからなのだが、これを解消するには、その公爵位をほかの人にあげるしかない。すると解消されるので、どうやら伯爵は、自分の公爵が王であることを嫌うらしい。つまり、伯爵<公爵=王、という関係は嫌いで、伯爵<公爵<王という関係、つまり自分の上司の公爵と王が別人でないとペナルティを持つ。

なお、自分の配下に王位の請求権を持つものがいると、それもやはり「Title Claimant」-20というペナルティがOpinionにつく。こっちのほうはどうしようもない。


最後に帝国。

フランス帝国。「まだ作られていない」とある。

ちなみに、フランス帝国の称号を持つからといって、以下略。

さっき見たアキテーヌ王国領はじつはフランス帝国の半分を占めていたことがわかるだろうか。もしアキテーヌ公爵領全体が一人の配下の属国で、自分は北のフランス公爵領しか統治していなかったら、とんでもなく皇帝権が弱いことになる。そういう状態を避けるために、ゲーム内では2つの公爵の称号を自分で保持することができる。ちなみに、ペナルティなく持つことのできる公爵位の上限を増やすことはできない。

というわけで、要するに、伯爵や公爵、王というのは土地に何かを付け足すわけではない。そうではなくて、簡単に言えば、多くの土地の支配者である者のことである。より精確に言えば、多くの伯爵領を従えるものが公爵、多くの公爵領を従えるものが王、というわけだ。

1つの男爵領をいくつか合わせて伯爵領を作って伯爵位を与え、伯爵領をいくつかいくつか合わせて公爵領を作って公爵位を作り、公爵領をいくつか合わせて王国を作って王位を作るわけだ。ちなみに、公爵位以上はゲーム開始時点ではまだ作られていないこともある。

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伯爵とか公爵というのは称号(Title)である。1つの伯爵領に1つの伯爵の称号が対応するわけだが、実際に伯爵号を持つ者のほかに、請求権(Claim)をもつ者(Claimant)が多数存在する場合がある。

例えばこの画像では、County of Carcassonneの請求権を持つ者がいまの保持者のほかに3人存在する。この3人はそれぞれこの請求権をもとに戦争を起こすことができる。で、戦争に勝つとこの伯爵領の支配権を得ることができる。

どうして請求権を持つ者がいるかというと、その親がその称号を持っていたのだが、子供がたくさんいたとかの理由でその称号が引き継がれなかったことがあったからだ。継承に際して土地の引き継ぎがなかったとしても、称号の請求権だけは引き継がれるというわけだ。これが問題を引き起こす。

ちなみに、その戦争を起こす主体はその請求権を持つ者の主君でもかまわない。主君が家臣のために戦争を起こし、戦争で得た土地をその正当な請求権をもつ家臣に与える。つまり、自分の属国にすることができる。もちろん主君自身が自分で請求権を捏造し、その土地を戦争で強奪することもできる。その場合はその土地を直接支配する者は変化せずに、その土地が属国化するだけだ。

これがこのゲームのキモだ。これまでの情報というのはただのデータに過ぎない。ただのデータをどれだけ集めてもゲームにはならないが、請求権を持つものが多数いるというところにゲーム性が出てくるわけだ。

さて、この請求権というのは、伯爵、公爵、王それぞれ独立に存在する。公爵の請求権を持つからといって、そのことがただちに下位の伯爵の請求権を持つことを意味しない。まったく互いに独立しているのである。もちろん、戦争で公爵位を手に入れると、その下位の伯爵を支配下に置くことができる。

たまに公爵とか王の称号の請求権をもつものが自分の家臣になることがある。その請求権を使って戦争を起こすことができるが、請求する称号のランクが高いほど多くのPrestigeを使用するし、戦争に勝ったあとはその家臣にその称号を与えるわけだから、強大な領土をもつ属国が誕生してしまう。


イングランド王に対して、自分の配下のÆlfwine Knytlingの請求権を使って戦争をふっかけようとすると1500Prestigeかかる。ちなみにこいつはハロルド1世の私生児らしく、大陸で修道者になったとwikiに書かれているやつだ。

なので、このゲームでは、いきなり高位の称号を狙って戦争するのではなく、ちまちまと伯爵領を狙って戦争するわけだ。ここがこのゲームのキモだ。

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以上の説明で、現実の歴史において、なぜヨーロッパで王がとても弱いことがあるのかが理解できるかもしれない。このゲームでもたった一つの伯爵領も持たずに王の称号だけ持つ、そういうことがありえるように設計されているが、それが現実でもそうだったからだ。イギリスやポーランドの「君臨すれども統治せず」ってやつはこのゲームの王とか公爵のありかたそのものだ。

たとえばヘンリー2世のwikiを見てみよう。

ヘンリー2世(英語: Henry II, 1133年3月5日 - 1189年7月6日)は、プランタジネット朝(あるいはアンジュー朝)初代のイングランド王国の国王(在位:1154年 - 1189年)である。ノルマンディー公(在位:1150年 - 1189年)、アンジュー伯(在位:1151年 - 1189年)でもあった。アリエノール・ダキテーヌの2番目の夫として知られている(wikiより) 

というわけで、ヘンリー2世は、イングランド国王、ノルマンディー公、アンジュー伯の称号を持っているわけだが、CK3的に言えば実際に統治しているのはアンジュー伯爵領だけで、イングランド全体が属国となっているわけだ。ちなみに細かいことを言うと、このゲームではヘンリー2世のように、フランス王の臣下でありながらイングランド王であることはできない。

さて、「君臨すれども統治せず」のジョージ1世になると、ドイツにしか直轄地はなく、グレートブリテン王国及びアイルランド王国の国王の称号だけ持っているわけだ。この時点ではもう属国とかもなくただ称号があるだけ。

イギリスは中世の封建制の上澄み(国王の称号)だけを残したまま残りはそっくり近代化して封建制から抜け出したのだけれど、それはもともとのヨーロッパの王権がもつ意味のなかにそういう抜け道が用意されていたから可能になったわけだ。

ただ、いまでもマン島とチャンネル諸島は王領になっている。逆に言うと、それだけが中世以来のなごりとして今でも残っている。

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長くなったが、これだけの情報がCK3の基本をなす情報だと思う。しかし、これはチュートリアルなんかではほとんど触れられていない。これが当然の知識としてあらかじめ持っていることを期待されていることにこのゲームのとっつきにくさがあると思う。

これはしかしよくあることだと思う。ゲームを作っている側の人は、ゲームの何が難しいのかよくわからないのだと思う。まあ仕方がない。とにかく、これだけのことをあらかじめ知っておかないと、このゲームは何が何やらまったくわからないということになる。

次は、継承についてと、支配者の権利について、それぞれ別の記事を作りたいと思う。

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